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55 大昔の大失恋

Author: 栗栖蛍
last update Last Updated: 2025-07-07 09:01:17

「えっ、芙美ちゃん?」

 智の慌てた声の後に、炎はみるみると縮まっていく。視界一面を赤く染めた魔法がキンという音を鳴らし、振り上げた手中に白い筋をたてて吸い込まれた。

 炎の色が薄れて、黒いシルエットだった彼がハッキリとその表情を見せる。炎と熱が全て消え去った所で、ザッと強い風が吹いた。

 食い入るように眺める芙美に駆け寄って、智は「どうしたの?」と戸惑いを見せる。

「邪魔してごめんなさい。智くんに話したいことがあって。咲ちゃんに言ったら、ここに居るだろうって言うから」

「邪魔じゃないよ。一人で来たの?」

「咲ちゃんが下で待ってる」

 来た道を一瞥した芙美に、智は「そういうことか」と小さく笑った。

「別にわざわざこんなトコまで来なくても良かったのに」

 智は芙美が来た理由を察して「ありがとね」と礼を言う。頬についた煤を指で拭うと、彼の顔は余計に黒くなった。

 芙美はふと気付いて頭上を見上げる。厚い雲に覆われた空の下、広場一面が炎で覆いつくされたというのに、辺りの木々には焼けた跡が一つもなかった。芙美自身も熱を感じてはいたが、服も綺麗な状態のままだ。

「さっきの魔法、凄い炎だったけど全然焼けてないんだね」

「びっくりした? 魔法は攻撃の対象を定めて撃つから、それがないとダメージはないんだよ。アイツ……咲ちゃんも言ってたでしょ? パフォーマンスだとかって」

「うん、でも結構熱かったのに」

 芙美は火照っていた頬に手を当てるが、もう冷たくなっている。

「芙美ちゃんがここに来てること、湊は知ってるの?」

「ううん、言ってないよ」

「そうなんだ。話ってのは昨日の事? 湊といいことあった?」

 自分から話そうと思っていたのに、先に智が切り出してしまう。

「ごめんなさい。私、湊くんが……」

「わかってるよ」

 全部言う前に智が遮る。芙美は黙って顎を引いた。

「謝ることじゃないよ。それに俺もダメなのわかってて、芙美ちゃんに告ったから」

「でも、あの時はまだ……」

 保健室で告白された時は湊への気持ちも曖昧で、ハッキリと智へ答えを出すことができなかった。

 けれど智は「バレバレだったよ」と笑う。

「芙美ちゃんのこと好きだって気持ちは本当。けどちゃんと諦めるから。今まで通りに――って、この間も同じこと言ったっけ」

 小さく歯を見せた智に、芙美はぎこちなく笑みを返した。

「ほら、また申
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  • いもおい~日本に異世界転生した最愛の妹を追い掛けて、お兄ちゃんは妹の親友(女)になる!?   51 キスなんてできるわけない

    「アイツは僕の妹だったんだ」 震える唇を固く結んで、咲は彼の反応を待つ。 蓮は驚きつつも言葉を探すように視線を漂わせ、掴んでいた手を咲から離した。落ちるようにソファへ座ると、「咲ちゃんも」と促してから話を始める。「もしそれが本当なら、俺が知ってもいい事なの? 芙美は何も……」「アイツはまだ記憶を取り戻してないんだ」 実際は咲が思い出させていないから――という事らしい。「それでも咲ちゃんには分かるの?」「うん、一目で分かった」 ヒルスは、この世界に現れるというハロンの詳細を聞かずに日本へ転生している。ルーシャに『運命が貴方を導いてくれるわ』と言われて、ずっとその時を待っていた。 高校入試の説明会で芙美と湊に気付いて、この間ようやく智にも会えたけれど、大人組の4人を察する事はできなかった。感覚の鋭い魔法使いの智でさえ大人達にはまだ気付いていない。湊に至っては智以外の転生者など疑ってもいないように見える。「異世界から来たって言っても魂だけの話だし、僕だって今の母親から生まれてる。自分は日本人だと思ってるよ」「だよね。芙美が生まれた時の事って、俺覚えてるもんな」 蓮は頭をぐるぐると捻りながら、一つ一つの話に相槌ちを打っていく。「これを蓮に話して良いのかなんて僕には分からないけど、蓮になら話してもいいのかなと思った。だけど、芙美にはまだ言わないでくれるか?」「あぁ、わかった。他にもその仲間はいるの?」「いるよ。結構いて僕も驚いてる」「何か楽しそうだけど、転生って何か理由があって来たんじゃないの? 地球でスローライフ送りに来たわけじゃないんでしょ?」 鋭い。流石アニメ好き男子だ。そこはあまり触れないで欲しかった。「なら、使命を果たしに来たって言ったらカッコ良く聞こえるか? 詳しくは話せないけど」 こんな時だけど、嫌なヤツの言葉を借りた。智が転校してきた日だったか、湊に何で白樺台高校を受験したのか聞いて、アイツはそう答えたのだ。 ――『俺は、使命を果たすためにここに来たんだ』 その言葉が一番適当な気がしたけれど、実際咲には湊のような重大な使命はない。「咲ちゃんや芙美も戦ったりするの? 使命って……そう言う事でしょ?」「僕は弱いから前線には出れないけど、もし芙美が記憶を戻したら、アイツに勝てる奴なんて誰も居ないよ。芙美は強いぞ。本当に

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